NHK杯 杉本和陽四段、石田流で斎藤慎太郎七段に惜敗

f:id:Fireworks:20170830214643j:plain

ノーマル三間→▲5六銀揺さぶり

第68回NHK杯1回戦、▲杉本和陽四段 対 △斎藤慎太郎七段戦。

本局の棋譜は、NHK杯テレビ将棋トーナメントのWebサイトで観ることができます(2018年6月時点)。

cgi2.nhk.or.jp

先手番となった杉本四段は、予想通りノーマル三間飛車を採用。

そして後手・斎藤七段の居飛車穴熊に対し、▲5六銀の揺さぶりをかけました(第1図)。

【第1図は23手目▲5六銀まで】
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v金v銀v桂 ・|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v王v香|二
|v歩 ・v歩v歩v銀v歩v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 銀 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 角 ・ 歩 歩 歩 歩 ・|七
| ・ ・ 飛 ・ 金 ・ 銀 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 王 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=23 ▲5六銀まで

先月行われた第28回世界コンピュータ将棋選手権(WCSC28)にて、居飛穴に対しHoneyWaffleが多用していた作戦でもあります(下記記事参照)。

www.thirdfilerook.jp

最近の棋書でいえば、「三間飛車新時代」(小倉久史七段、山本博志奨励会三段の共著)で詳しく解説されている形です。

第1図以下、▲4五銀から▲3四銀と歩を取る構想を防ぐ手段としては、①△4四銀、②△4四歩、③△5五歩▲4五銀△8四飛、などが挙げられますが、斎藤七段は①△4四銀を選択。

上で紹介したWCSC28でも、HoneyWaffleの▲5六銀に対し後手のコンピュータ将棋ソフト(名人コブラ、Hefeweizen、PAL、大合神クジラちゃん2)はすべて△4四銀と指していることから、これが最善手なのかもしれません。

▲5六銀揺さぶり→石田流

進んで第2図。

【第2図は46手目△3五銀まで】
後手の持駒:歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v金v桂v王|一
| ・v飛 ・ ・v金v角 ・v銀v香|二
|v歩 ・v歩v歩 ・v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ 銀 ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ 歩v歩 ・v銀 ・ 歩|五
| ・ ・ 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩 歩 ・|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ 銀 王 ・|八
| 香 桂 ・ ・ 角 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=46  △3五銀まで

途中、△5五歩に対し▲6五銀と上がり、その後5四まで銀が進出しています。

また、▲7四歩△同歩▲同飛△7三歩▲7六飛と、7筋の歩を手持ちにしながら7八の飛車を7六に味良く移動することに成功しています。

第2図以下、どう手を作っていいか難しい局面ですが、実戦は▲7七角△4四銀▲6六角!△5六歩▲7二歩!△同飛▲5六歩△2四角▲7五飛(第3図)と進行しました。

【第3図は55手目▲7五飛まで】
後手の持駒:歩二 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v金v桂v王|一
| ・ ・v飛 ・v金 ・ ・v銀v香|二
|v歩 ・v歩v歩 ・v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ 銀v銀v歩v角 ・|四
| ・v歩 飛 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|五
| ・ ・ ・ 角 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ 銀 王 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=55 ▲7五飛まで

▲7七角から▲6六角と、細かい動きで角を急所へ。

飛車の横効きが止まったことから△5六歩が嫌味な手ですが、裏をかく▲7二歩で△同飛と取らせて一手稼ぎ、じっと▲5六歩。

そして△2四角に対し▲7五飛。

△5六歩以降、▲4四角と切って銀を打つ攻めが何度も頭をよぎりますが、いずれも華麗にスルー。

局面を急な流れにしない戦術です。

その効果で、のちの▲7七桂〜▲8五桂を間に合わせて左桂をさばくことに成功しています。

200手越えの大激戦

その後、杉本四段は攻めの飛車、角、銀もすべてさばいて振り飛車満足の中盤戦へ(第4図)。

【第4図は89手目▲4一飛まで】
後手の持駒:飛 角 銀 桂 歩三 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v歩 飛v銀v桂v王|一
| ・ ・ ・v金 ・ ・ ・ ・v香|二
|v歩 ・v桂 ・ ・ ・v銀v歩v歩|三
| ・v歩 ・v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩|五
| ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ 銀 王 ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角 金 歩二 
手数=89 ▲4一飛まで

ここから斎藤七段が見せた辛抱が、さすが順位戦B級1組在籍を思わせるものでした。

杉本四段も負けじと辛抱強く戦い、一進一退の長い長い中盤戦が続きます。

最終盤、杉本四段が王手をかけたところで、斎藤七段の痛恨の受け間違いにより詰みが生じていました(186手目の局面)。

ところが短い秒読みの中、杉本四段が詰みを読み切れずに逃してしまい、万事休す。

 218手におよぶ大激戦の末、斎藤七段の勝ちとなりました。

杉本四段としては惜しくも金星を逃した格好ですが、また素晴らしい熱戦を見せてくれることを期待したいと思います。