第58期王位戦第5局 菅井七段、新構想「阪田流三間飛車」を初披露

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新たなうっかり三間飛車

第58期王位戦第5局、羽生善治三冠 対 菅井竜也七段戦。

棋譜や解説は、王位戦中継サイトで観ることができます(2017年8月時点)。

王位戦中継サイト

 

菅井七段がまたまたやってくれました。

阪田流向かい飛車ならぬ、「阪田流三間飛車」です(第1図)。

【第1図は10手目△3二飛まで】
後手の持駒:角 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v王 ・v銀v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩v歩v金v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ 王 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角 
手数=10 △3二飛まで

といってもこの名称はジョークです。

△3三金型で三間飛車にしているため、一見「阪田流三間飛車」という名称はしっくりきますが、阪田三吉はこんな構想を見せたことはありません。

第一感、△3四歩と△3三金があるため飛車先が非常に重く、全く指す気が起きません。

形がほぐれるのにも手数がかかります。

プロ棋界の歴史上、初の構想であることは間違いないでしょう。

関連記事

www.thirdfilerook.jp

「阪田流向かい飛車」とは

阪田流向かい飛車を知らない方のために、かんたんに解説をしておきます。

「阪田流向かい飛車」とは、1919年、阪田三吉が披露した、△3三金型で向かい飛車にする構想のことを言います(第2図)。

【第2図は10手目△2二飛まで】
後手の持駒:角 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v王 ・v銀v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩v歩v金v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ 王 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角 
手数=10 △2二飛まで

大勝負でこの構想が披露され、またこの将棋の内容が鮮烈だったため、「阪田流向かい飛車」と呼ばれるようになりました。

が、実は阪田三吉がこの構想を披露したのは1局のみ、とされています。

www.shogi.or.jp

急戦策と持久戦策があり、いずれもさばきよりも抑え込むことが中心で居飛車党でも使いこなしやすい戦法である。

筋違い角を組み合わせるなど、先手の飛車先を逆襲する狙いは単純明快ながら破壊力があり、相手にする方も甘く見ていると一気に潰される展開になる。

阪田流向かい飛車 - Wikipedia

この阪田流向かい飛車でさえ、銀ではなく金で攻めるためハマれば破壊力はあるものの、居飛車側に適切に対処されると無理筋とされる「奇襲戦法」扱いです。

参考文献

まとめきった菅井七段

ましてや本局の「阪田流三間飛車」では、飛車先が重いため奇襲を仕掛けることはできず、自らバランスをとるのが難しい序盤戦にしてしまっています。

・・・しかし、そこはさすが菅井七段。

周到な事前研究もあったのでしょう。

見事に綱渡りの序盤戦を乗り切り、互角の駒組みで初日を終えました(第3図)。

【第3図は51手目▲6七金右まで】
後手の持駒:角 歩二 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v王v銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩 ・v歩v飛v歩v歩|三
|v歩 ・ ・v銀 ・ ・v金 ・ ・|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・v桂 ・|五
| 歩 ・ ・ 歩 歩 銀 ・ ・ ・|六
| ・ 歩 銀 金 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 王 金 ・ ・ ・ ・ 飛 角|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=51 ▲6七金右まで

先手には▲2六歩から桂得を図る狙いがありますが、後手は角が手持ちであることと、先手の飛車角を窮屈にしていることが主張点で、バランスがとれているといえます。

 

本局に勝利し、初戴冠なるか。

次回に続きます。

2017年8月30日 追記

このあと菅井七段が勝利し、見事王位のタイトルを獲得しました。

おめでとうございます。

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